『毒姫』三原ミツカズ
2013年6月末に最終巻の出た三原ミツカズ『毒姫』シリーズ
全5巻。
作者の三原ミツカズの名はあるいはドラマにもなった『死化粧師』でご存知の方も多いのではないかと思います。『DOLL』シリーズをはじめ、華やかな衣装と死とが隣り合う作風はゴシックという言葉が似合い、中世西洋風ファンタジー世界を舞台に身体そのものを毒と化し敵の元へと送り込まれる人間暗殺兵器の運命を描いたのが『毒姫』シリーズ。“毒姫”を作り出し謀略を巡らせるミトラガイナ国。グランドル国の王を暗殺するために送り込まれた毒姫・リコリスとグランドルの三人の王子たち。グランドルと篤い信頼で結ばれた隣国イスキア。けれど毒姫による暗殺は失敗し、ミトラガイナの陰謀は三国の関係を変えはじめます。
お話は毒姫であるリコリスを主な視点に展開します。グランドルの王子たちやイスキア王室、ミトラガイナな女王や毒姫たちの本拠地のエピソードを彩りにして。暗殺兵器である毒姫たちには端から幸せになる道などありはしないことを予感させつつも若く美しい娘たちであることに違いはなく、儚く幸せを夢見もするのです。しびれる。グランドルの王室に送り込まれた毒姫の王子たちとの出会い。グランドル王室の秘密とリコリスの訪れが王子たちの運命を狂わせ、破滅への予感を色濃くして行くストーリー。言葉にして紹介してみてもうまく説明できている気がしない三原ミツカズのゴシック感。コントラストの強い、濃いめのタッチもしっくり。
シリーズの中では最初のベラドンナのお話、四巻のリコリスの侍女のお話が心に沁みました。お話全体ではこうなるしかないだろうという最後の幕引きも良かった。毒花の名のつけられた少女たちの物語、お勧めです。
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