『暗黒女子』秋吉理香子
暗黒女子
秋吉理香子
双葉社
2013.6.19
TwitterのTLで非常に好みの作風の(たぶん同人の)作家さんが紹介していて、これはぜひ読んでみなくては!と手に取ったのがこの『暗黒女子』。書誌情報に付されたあらすじでもお嬢様学校を舞台にした美少女の死から始まるとあって好みどストライクに違いないと期待値の高かった一冊です。見事に期待に応えてくれました。
物語はいつみという美少女の死を起点とします。正確には、いつみが部長をしていた文芸部の面々が集う定例会での闇鍋のシーンから。少女漫画の中にしか登場しないような絵に描いたようなお嬢様学校の、紅茶とスイーツの振る舞われるサロンを持つ文芸部で闇鍋!というちょっぴり面白おかしく違和感のある場面なのですが、この闇鍋女子会は死んだいつみに関する自作小説を部員それぞれの朗読で披露する、という趣向に沿って進んで行くのです。
少女小説風のきらびやかで爽やかな文体を予想したのですがもう少しこってりとしていつつ、いつみの周りを囲んだ少女たちの告発的な——小説と言うよりはドキュメンタリ的な物語が綴られます。
タイトルからして『暗黒女子』。きっと登場人物たちの誰かが「暗黒」を抱えていてそれがいつみの死を招いたのだろう、と予想を立てつつ読み進めると思うのですが、期待通りでありつつ同時に裏切ってくれるはず。予想の当たり外れを楽しむタイプの本格ミステリというよりは「こうかもしれない」「ああかもしれない」と作者の思惑に振り回されつつ楽しむ話ではないかと思います。
岩井志麻子の『女學校』が面白かったという人にはたぶん『暗黒女子』も好みに合うんじゃないかな。
以下蛇足ですが……。
文芸サークルなどでこの本を題材に読書会などを開く際には闇鍋を囲みながらというのはいかがでしょう。作中のシチュエーションに敬意を表して。
『暗黒女子』は最後まで読まずに……そうですね、七〜八割ほどまで読んで「おあずけ」にしておき、皆で鍋を突きながら終幕部分を揃って読むのが楽しいのではないかと思います。
というわけで、冬の夜のお鍋の友にいかがでしょうか。
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