コミック百合姫2014年1月号

一迅社
2013.11.18
雑誌の暦は早くも一月。新年号。浴衣に畳に藤柄があしらわれた表紙は和テイスト。裏表紙の内容紹介も和柄で日本的な色合いのタイリング&フラットデザイン。
表紙
武梨えりのイラストによる新シリーズ表紙。2014年を通じてまた物語を見せてくれるのでしょうか。しょっぱなから枕二つ並んでる関係はどんなシチュなのだろう。修学旅行的なものでしょうか。
屋上に咲く花 水あさと
『世界制服セキララ女学館』が印象にあった作者。 前号に載った予告イラストからはメランコリィな雰囲気のお話が載るに違いない!と予想したのですが、ほんのりギャグ風味。微妙に不条理感もあって『百合姫』では2011年のリニューアル号以来控えめになっていた感じが戻ってきつつある感触です。屋上で昼食を取る孤立気味の主人公が見たのは人目をはばかり暴食する生徒会長の姿だった!というところから始まるお話。
チェリーブロッサム ねこ太
レポート漫画や『ニコニコ百合姫』での印象もあるのかもしれませんがギャグ漫画っぽいかな?と思う作風に生々しさがぽん!と出てきて不思議なエロティシズムが漂います。結婚式が始まるまであとわずかという先輩の元に訪れた主人公。ちょっぴりダークであったりも。
恋心メトロノーム 大沢やよい
大沢やよい、こういうお話も描けるんじゃーん、と新鮮でありました。吹奏楽部が舞台なのですが、たぶん作者も音楽経験者ではないかという「吹奏楽部の日常」質感がありました。やー。こんな濃いデテールを投入できる得意ネタがあるなら、連載に投入すればいいのにと思ったり。部活の空気感がすごくあって良かった〜。
ハチミツメソッド ちさこ
ボーイッシュなスポーツ選手の彼女と主人公。主人公にとっては彼女は王子様みたいな存在であったのだけど、という見方から生じていただろう擦れ違いに気づかなかった主人公。王子様側の心理描写をカットしてのストーリーではありますが思うところはあったのだろうなと想像させてくれました。ちさこのお話では主人公自身も周囲も抱えているステレオタイプの「フツー」を強力に打ち出し、そこから離れるには……を描いてきます。
citrus サブロウタ
前回からちょっと様子のおかしかった芽衣がついにダウン。そして明らかになりはじめる芽衣の行動の背景。今回も勢いのある展開で36ページ。黒髪美少女・芽衣がけっこうオジサン的脳味噌筋肉ゴリ押し思考の持ち主であるあたりが物語を牽引していきます。黒髪は正義! 負けるな柚子。キミの真価が問われるシーンで次回に続くになってるゾ。
想い出ラバーズ 蕗
気の弱い幼馴染の守護者の位置にいたはずなのに、大人になっていく過程で独り立ちを始めた幼馴染に戸惑ってしまう主人公。まだ作風にはぎこちなさも残りますが、手慣れてしまっては描けない要素もあるはずで、たぶんそれがまだデビュー間もないこの著者の今の作品なのだと思います。
いつでも君はそこにいた まに
友達以上恋人未満の同性の先輩がもし男だったら、という思いつきから連鎖する幻想譚。独特の描線、独特の話のリズムがある作風で読む側もそこに合わせていかないと読みづらいとなってしまうかもしれないけれど、でも、この作者の世界に流れる独特の感じは貴重なはず。読むリズムを少し遅めに取ると現れてくる世界があるような気がするのです。
ロボトミーとこわれた果実 黒霧操
少女漫画には楳図かずお的な恐怖漫画の系譜があり、今も「本当にあった怖い話」的なものには根強い読者がいます。少女漫画に色濃い影響を与えたゴシック小説の系譜でもあるのでしょう。黒霧操はそんなゴシック要素と少女趣味を好む作家さん。今回はロボトミー手術用のメスからお話が始まったりします。身近な存在への保護欲と百合が描かれ、冒頭のダークな要素に相応のダークな展開が仕込まれていたり。
学園近距離恋愛怪談 源久也
学園七不思議的なネタで源久也お得意の甘々なお話です。絵の中から抜け出してくる少女、てけてけ(?)、トイレの花子さん……。怪談でも可愛らしいのがこの作者の持ち味。
ゆるゆり なもり
今回は三本立て。逆上がりとちなつのお泊まりとごらく部ロボ。誰かグレートごらく部Zをポリゴンで作らないかな。京子Zも。MMDで踊ってるの見てみたい……。
犬神さんと猫山さん くずしろ
2巻
もこの号と同日発売となり、次号では何か発表が予定されているらしい「犬神さんと猫山さん」。今回は犬神さんや秋の学校外での日常編。猫山さん、パラダイス銀河って年齢詐称してないですか。
モラトリアム(前編) コダマナオコ
今回のコダマナオコの話も好みだ〜。百合という表現は女性同士の友情から同性愛、あるいは常軌を逸した執着までを含む幅の広さがあってこそ。特に好みなのがセクシャリティがまだ定まらない人の戸惑いや揺れを描いた話。今回はまさにそんな話なのです。モノローグが多めなのも今回のお話に合ってるし、相手の気持ちに探りを入れつつの緊張感も「これだ!」という感じ。きっと今回のキャラ二人の距離感・関係を思いついたときにもきっとhimecafeで語っていた「萌え」と「ウソにならないように」がハマる手応えがあったのではないかと思います。
ブライトモーニングスター 大北紘子
大北紘子は読者に警戒されている。そして作者もそれを自覚している。そんな気がしてくる今回のお話でした。舞台は太平洋戦争前風の日本。お屋敷の姉妹。火災に見舞われた姉は目が見えなくなり、顔に痣が残ってしまい、というところから始まります。妹は甲斐甲斐しく世話をするのですが何か変だぞ……と違和感が漂いはじめる大北節。
今回は黒霧操も大北紘子もダークさの漂うお話でしたがいっそタカハシマコやさかもと麻乃、慎結といったダークなお話を時々出してくる顔触れを加えて『黒百合姫』特集号なんてどうでしょう。小説も『暗黒女子』の秋吉理香子とか黒い側の宮木あや子から原稿を集めて。テーマ特集って『百合姫』はあまりやってこなかった気がします。
月と世界とエトワール 高上優里子
前回と今回は岸辺世界の回想編。よぞらが入学してくる前の、世界が鬱屈を抱えるに至った経緯を綴ります。年明け1月には単行本2巻の発売告知もあって楽しみ。今回で回想は終了でよぞらと世界が手を携えるシーン——1巻の最後に繋がり、新たな展開へのプロローグとなりました。
きものなでしこ 八色
かの子とサーヤはまだまだぎこちないというかういういしいー。1月号ですが次が3月号ということでバレンタインイベントを先取り。
羊と氷菓(後編) 井村瑛
前号掲載の前編からダイレクトに続きのシーンです。二ヶ月間が開いた少しややこしめの三人の関係なので前号の復習から入った方がお話に感情移入しやすいかも。綾乃と洋子と千晶の、均衡の崩れてしまった関係が新たな落着点を求めて動きます。
himecafe
今回のゲストはコダマナオコ。漫画の絵の印象もすっきりしゃきっとした印象ですがインタビューでもそんな印象です。
Yurinote 峰なゆか
今回は風俗のお話で非常にぎりぎり感がありました。どうなるこの先、とぐぐぐと引き付けておきながら落とし所もうまくヤラレタ!と。『アラサーちゃん』
の単行本も読んでみましたがぶっちゃけ感というか女の舞台裏感が楽しかった。『百合姫』はエッセイでも読切漫画でも新しい世界を見せてくれるのが嬉しいな。
ガチ百合道 ねこ太
「Yurinote」と「ガチ百合道」のコーナー近辺は毎回変人濃度高めです。コラム的な記事ではこの二つはお気に入り。
百合仙人の「百合SS」を書こう
2011年5月号と2013年5月号でもあった百合SSの創作ガイド。しぶとく復活してくる記事なあたり編集部は百合SS文化みたいなものを熱望しているのやも。
私の世界を構成する塵のような何か。 天野しゅにんた
なんとなんと最終回。れみさん、自殺しちゃうキャラなんじゃないかと予想して恐々としながら読んでいましたこのシリーズ。雨の卒業式で落ち着いた会話で締めくくられてようやくほっと息を吐いたのでした。なんとかうまく収まって良かった。良かった……。
game 竹宮ジン
竹宮ジンの『百合姫』でのお話は直後の展開を読者に想像させておいて「やっぱりキター!」みたいなあたりが楽しいと思うのです。今シリーズは設定もこってり。今回のモリコはベッキーに対してしっかり怒る権利があると思いまーす。
ネムレルモリ 慎結
片付け魔の主人公と失恋以来だらしなくなってしまった年上の幼馴染のお話。黒髪の片付け魔ちゃんは失恋する前の幼馴染が同性と恋をするのを見ていてどんな風に思ったのかな、などと考えたのでした。
ボウソウガールズテキモウソウレンアイテキステキプロジェクト 河合朗
むむ? 前号から体育倉庫あたりに閉じ込められていたけどこれ誰の仕業だったのだろう。展開的にはめまぐるしくミスコンを駆け抜けていった感じの今回、いよいよ葵と紅子の話になっていきそうです。
リリー・マルガリーテとかすみ草 片倉アコ
今回は片倉アコもちょっとダークな要素で来ました。主婦とその娘の友人、という関係を描いたもの。年齢や立場のギャップに正面から取り組んだお話は少しぎこちなくもありましたがチャレンジの意気が感じられて気持ちよくもありました。
恋愛遺伝子XX 影木栄貴/蔵王大志
ここしばらく掲載が不安定であった恋愛遺伝子XX。最終回です。ここ数回は少し駆け足気味の印象でしたがとにもかくにもなんとか完結して良かった……。
百合男子 倉田嘘
「百合男子」は百合ガイド的な役割を果たしているのだと強く実感した回でもありました。「餌だけ食いやがった!」には笑ってしまいました。身近な百合好きの集まりも小なりといえどもコミュニティという桜ヶ丘くんの無駄に?暑苦しいドラマ回でした。前回と今回で近々用意されているであろう展開へじりじりと網を引いていた気がします。久しぶりに武蔵野くんも登場しないかな。
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百合姫コミック大賞の結果って大抵締切の過ぎた次の号あたりで載っていた気がするのです。9月30日に第10回の締切があったはずなのですが今号には結果発表が見当たらないような。次号かな?