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『Rainy Song』百乃モト

Rainy Song
百乃モト
一迅社コミックス百合姫コミックス
2013.10.18

 百乃モト『キミ恋リミット』以来の久しぶりのコミックス。『百合姫』2011年5月号から2013年9月号までの掲載分をまとめたもの。クールな感じの金髪っ娘と地味そうな黒髪っ娘が相合い傘の表紙イラストは表題作「Rainy Song」から。帯の「か、かわいいとか思ってないから!」は金髪ちゃんの心の声でしょうか。

 「或る少女の群青」。通学の電車で見かける同性カップルの在り方に憧れて密かに視線で追ってしまっていた鈴。ひょんなことからその二人と会話を持つことになるのだけれど……。百乃モトは同性愛の困難——社会的な位置づけの不安定さをお話に織り込んできて切なくなります。
 「くらやみのアスタリスク」前後編。『キミ恋リミット』ではとても悲しい役どころを背負った紘子さんの気持ちを回収するお話。三角関係が辛い話であった前登場作ですがようやく、ようやくほっとできたのでした。『キミ恋リミット』と合わせて読まれるのがオススメ。
 「スノーフレイクス」は卒業してしまう同性の上級生に贈ろうとマフラーを編むハル子と友人のるいとの友情とあるいはもしかしたら友情から少しだけはみ出すかもしれないほのかな感情のお話。どろどろしがちな人間関係のお話が印象に残る百乃モトですが、ローティーン向け少女漫画誌に載りそうなこういう設定も良い感じなのです。それは表題作「Rainy Song」にも共通していて、ちょっと尖ったロック少女が素直になれないあたりでもぎゅんぎゅん来ます。細やかに手の入った整った作画とともにお話にも丁寧感が滲んでいて、ハデさは控えめながら好感度の高い作者。

 単行本派の人のための試し読みなんかもあるといいのに、とちょっと思いました。表紙の印象と内容の印象も近いと思うので表紙が気に入った人ならハズレということはないような気がします。あ、でも前単行本共々、三角関係や切ない設定もある作家さんなのでそのあたり了解できる百合漫画好きさんにオススメしたいです。

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