『GIRLS UPRISING』カズアキ×深見真 百合姫表紙画集
GIRLS UPRISING カズアキ×深見真 百合姫表紙画集
一迅社
2014.2.1
2011年の『コミック百合姫』の表紙と巻頭カラーを飾ったカズアキ×深見真の手によるイラストノベル連作が一冊にまとまりました。それまでピンク色主体で少女漫画誌と萌え漫画誌の中間のような表紙であった『百合姫』が装いを一新し、隅から隅までデザインに凝ったあまり漫画誌らしくない洗練を身につけて現れたのです。しびれました。格好良かった。その格好良い要素を大きく担っていたのがこのカズアキ×深見真の「GIRLS UPRISING」という連作ストーリーのイラストノベル。表紙から巻頭カラーをつなぎ、折り込みも駆使したギミックもあり斬新でありました。それがようやく一冊にまとまって刊行されたのです。
表紙は新たに書き下ろされたとおぼしき千里と紗香。よく見れば鎖付きの首輪であったりと「そうそう、この子たちこうだった」と三年前を思い出します。女の子にハードなガン・格闘アクションの組み合わせの得意な深見真と華やかで精緻で透明感あるイラストが印象的なカズアキの組み合わせ。ムックに近い体裁でカバーの分離しないソフトカバー?のB5版。『百合姫』本誌と同サイズ。表紙では題字や背景が面白い色味のある箔押しになっていました。
ページを開いて「おや?」と思ったのは色味が控えめなこと。『百合姫』の表紙を飾っていたときは彩度の高い印刷がされてインパクトを振りまいておりました。これは以前の『百合姫アートワークスCHRONiCle』でもそうでしたが画集ということで原画に近い発色を意図しての収録なのかな、と思います。表紙はコート紙、中身もフルカラーでセミコート紙。『百合姫』掲載時とは文字背景デザインも変わっていて文章が読みやすくなりました。文章2〜3ページ毎にカラーイラストが入ってます。最終章として深見真によって「ニュー・ワールド・オーダー」章が書き下ろされています。
店頭でもたぶんラッピングされてしまって中身を見ることができないと思うので「パラ見して確かめる」のは難しそうですがカズアキの絵が好きな人も深見真の小説が好きな人も満足できると思います。突然の荒廃によって無政府状態に陥った日本で女子高生たちが銃器を振り回す、というMADLAXやNOIRやGUNSLINGER GIRL的な少女×ガンアクションが好きな人には楽しめるはず。ページ数は全88ページ(表紙・イラスト込み)ですが文章のボリュームはけっこうあって14文字×33行×4段組×46ページ(テキスト分)とライトノベルの文庫本一冊分に相当するのではないかと思います。群像劇的に同一世界での複数ペアの活躍を描いた短編の連作集。深見真の小説的には割と穏健?で少女たちが荒廃した世界で男たちによって酷い目に遭わされるというシーン描写はないので百合ノベルとしての地雷要素はないです。一部女性キャラによる加虐描写はありますが。
改めて読んで、また『百合姫』で小説の掲載始まればいいのに、と思ったのでした。この「GIRLS UPRISING」も好みだったし、森田季節の『ノートより安い恋』、『ウタカイ』、宮木あや子の『あまいゆびさき』
、雨降波近の『ヒカルセカイ』と非常に好みの小説が載せられてきたのです。未読であればこれらもぜひ。
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