『ひとよひとよに乙女ごろ』今村陽子
ひとよひとよに乙女ごろ
今村陽子
少年画報社ヤングキングコミックス
2014.3.17
百合アンソロジー『ひらり、』のSM百合「ほんとのかのじょ」で知って以来、追いかけて読んでいる今村陽子の新刊。近親、主従、SM、同性愛とセクシャリティや人間関係のややこしい話を得意とする今村陽子ですが今回はTS、性転換ものです。男の子が女の子になっちゃった!という話で大正ロマン的な世界観と軍人という要素が注ぎ込まれつつ、少女漫画的なタッチでコミカルに。掲載誌が『チェンジH』であるせいか男性のメンタリティで女性の体、という部分を際どい描写で見せる場面が多めです。濡れ場ではないですが扇情的な描かれ方や裸体が多いのでそういった要素が苦手な方は避けた方が無難かも。
私の眼には女体がきれいに堂々と描かれているのが魅力で、扇情的ではあっても男性向け成年コミックのような極端さでもない匙加減がツボを刺激してくれます。少年画報社のサイトには試し読みコーナーもあるのですが女体描写の魅力がばーんと示される直前までしか見られないのが惜しいところ。
TSコミック誌で始められたシリーズで、このブログで多く紹介する百合漫画ではなく百合漫画好きさんへのおすすめというわけではないのですが、『ひらり、』に掲載された「ほんとのかのじょ」が好みであれば、たぶんこちらも好みに合うと思います。「ほんとのかのじょ」もセクシャリティやSM嗜好を含めて“揺らぎ”がテーマになっているのは共通だと思うので。
巻末に記された編集者の名前に見覚えがあって、手元の漫画をいくつか覗いてみたところお気に入りの『僕らはみんな河合荘』と同じ編集者でした。なんとなく嬉しい。
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