第十八回文学フリマ雑感
五月五日、東京流通センターで開催された文学フリマの様子を見てきました。購入した本の中から印象深かったものの簡単な感想を。
季刊 藍色茜色 特集:少女の終わり
少女論の本です。面白かった。“百合”と少女論の近縁性。女学校。『少女の友』。『乙女の港』。創作の欠片。私好みの要素がいっぱい詰まった本でした。テキストに付された参考文献は少女論の宝庫。フィクションとしての“百合”をきっかけに「少女とはなんだろう」という側面に興味を持った人への良いガイドになるはず。オススメ。とても。
幻想コレクション(緑) 編:秋山真琴/雲上回廊
水池亘、鳴原あきら、渡邊利道、泉由良の四人・四作を集めた短編集。文庫サイズのセンスを感じさせるパッケージングの第一印象も良く、収録されているお話たちも高水準。太陽系を舞台にした宇宙SFの渡邊利道「シャーロットに薔薇を」が特に気に入りました。
百合人
百合関連の総合誌的な冊子。A4、50ページ。フェミニズム、レズビアンといったキーワードをテーマにしたセクシュアリティにがっちり噛み込んでいる内容。百合漫画のふわふわのフェム的な話題が扱われているものではない、という前提でのオススメ。エッセイや対談的なものを集めてました。
非生物少女蒐集箱 ソウブンドウ
文学フリマのお目当てはこのソウブンドウの本。今回も期待に違わない素晴らしい中身でした。星の擬人化と結晶がテーマが目映い「赤い瞳の少女座」(雪村星衣子)、人型機械と格闘アクションで力強く重く儚い「空蝉ハ望月ノ雫ニ濡レテ」(志保龍彦)、白と黒のコントラストの中の少女が印象的なイラストの「篝火少女」(稗田やゑ)、懐かしい馴染みあるような異世界をしっとりと描いた「微睡む糸の昼下がり」(七木香枝)、新たに加わった少女の人形と兄たちと打ち解ける様を描いたコミック14ページ「ほしどろぼう-VENUS-」(きのえ)、北欧神話が薫る結晶の少女を崇める狩人の物語「揺籠ラテルナ・マギカ」(空木春宵)、色濃いゴシック感が素敵なイラスト二点「墓標少女・棺桶少女」(machina)、心を失ってしまった少年と絵の中から抜け出した少女の少し童話的なファンタジー「君の終わりはきっとやさしい」(神尾アルミ)。質に信頼のおけるソウブンドウ。キーワード「結晶化」や「恒星擬人化」にびびっと来る人には強くオススメなのです。各話の紹介&サンプルもソウブンドウさんのサイトにあるのでぜひチェックを。
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