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『ひらり、』vol.14

ひらり、 vol.14
新書館
2014.7.30

 表紙は「加瀬さん」シリーズの高嶋ひろみ、扉絵は今村陽子。扉絵はストロボとスローシャッターを組み合わせたかのようなちょっと面白い影の感じが出されていました。作者Twitterに「先にグレーで塗ってから最後に色を入れる」とメイキング解説があってさらに興味深く。

私馬鹿 雨隠ギド

 高校生の頃の印象と社会人になってからの再会と。耳たぶの、ピアス穴の位置にホクロが……という設定が皮膚感覚的なリアリティを備えてぐっと来たのでした。

五十鈴のカウンター 玄鉄絢

 『ひらり、』初登場の玄鉄絢は『少女セクト』シリーズのスピンオフらしき短編。単行本しか知らなかったのですが再録であるようです。『少女セクト』は成年コミックなので興味を持たれた方には一応ご注意を、と。

ありふれたかくしごと 犬丸

 演劇部を舞台にした群像劇「witch meets knight」シリーズ、今回は火ノ見をメインに。視点は野々丘副部長に沿っているかな。んでですね、今回はもらい泣きをしてしまいました。なんだこれなんだこれ。二回読んでも三回読んでも目頭が熱く。大感動の派手なシーンじゃないはずなのに。回を重ねるごとにオススメ度が増してきます。

桜の実の熟する日 磯谷友紀

 vol.12の「少女の魔笛」の続編で、高校生の子供のいる女性と女子高生のお話。今回は前回とは逆に理世(女子高生)側の視点になります。冒頭で麻知(年長の女性)さんの歳が挙がるのですがインパクトありました。これは確かに麻知さん躊躇せざるを得ないかも。短いお話だけれど、すんごい葛藤があったのは想像に難くなく。

傷心 ユキムラ

 大人の百合漫画。そんな感じです。遊びのつもりで付き合い始めたはずなのに二年も関係が続いている同性の恋人の背中にはワンポイントのタトゥ。絡みの描写もありますがこれが素敵にカッコイイ感じなのです。フランス映画の一場面のよう。

コールアンドレスポンス 雁須磨子

 うわー。切ない。同性の恋人が距離を取り始めたように感じられ「なぜ?」と。ギシンアンキに取り憑かれ……。

わたしの好きなあの子のこと 芥文絵

 前号掲載話からの続きです。今号の『ひらり、』には擦れ違いをキーにしたお話がいくつか掲載されていますがヤキモキ度MAXは文句なしにこれでした。読みながらジリジリしたい派にとてもオススメ。

ガールフレンド サワミソノ

 『ひらり、』初登場の作家さん。絵柄の、なんというか、女学生感がとても合っていて好感度高く、静かで切ないストーリーも良かった……。

ほんとのかのじょ 今村陽子

 前回に続いて女子お泊まり回。けれどやっぱりダメMのもえなのでした。キラキラに盛り上がるのにぃ。当たり前に乙女心も(S特性も)備えているゆーかがちょっと不憫でもあります。

ソーダ水のキス 袴田めら

 一段落ついたのかなと思っていた菊花×椿シリーズ。前回は百合オタ読者の物議をかもしそうな話でしたが今回は正統派展開。ラスト2ページが特に素敵だった……。

under one roof/parlor

 under one roofは前回から攻め攻めの海帆ですが、今回も絶好調の展開です。そして毎回思うのですがわずか4ページなのでもっと読ませろーっ状態。parlorも変な人絶好調です。

ライバルと加瀬さん 高嶋ひろみ

 今回は四コマ。加瀬さんの過去の陸上編で、これまでのシリーズで出て来たエピソードの断片にきれいに当てはまる番外編的ピースとなります。『ひらり、』と同日発売の単行本2巻目が出て、未収録は『ほうかご!』の1、2と『ひらり、』vol.13、14の4エピソード分かな。

ゴクドーマフィアガール おちゃ

 明るくポップなノリ。ヤクザの娘である主人公は学校でも浮いた存在。ところがイタリアからの転校生は気さくに主人公と接するのでした。すぱっと楽しい展開できれいにまとまってます。

逃げたい親友 くみちょう

 内容よりもまず収録順でぶはっとなってしまいます。ヤクザ・マフィアものの次にくみちょうの作品。え、ここおもしろがるとこと違う?
 vol.11の「out of blue」、vol.12の「逃げたい親友」に続いてのシリーズ三話目です。割とテンション平板で超平静キャラの理沙とノリノリ純情ヤンキーのかずみですが、積極的なのは理沙の方。しかも超押せ押せの意外性。ところが今回は勢いばかりでヘタレ受けのはずのかずみからアプローチ。さあ、どうなる!

ガラ子ちゃんとスマ子ちゃん 道野ほとり

 第10回ひらり、GLコミック大賞の期待賞作品です。携帯電話の擬人化もの。ぎこちなさはありますが楽しかったです。

王子様もかぼちゃの馬車も 四ツ原フリコ

 vol.12の「恋に灰まみれ」の続編となります。妹となった沙子が寧子の家に来るまでの経緯が回想として語られるのですが想像以上に重い背景があったのでした。今回のお話を読んで「恋に灰まみれ」を読み返すと先に単独で読んでいたときとは違う感慨がゾゾゾと背筋を走り。今回のお話では扉と最後のページが特に印象に深く残りました。

聖純少女パラダイム 森島明子

 ゆっくりと進んで来たリリと葵の関係、葵が意外にも難物なのでした。ところがところが!

ホットケーキの火曜日 佐々山彰

 第5回ひらり、GLコミック大賞の期待賞作品。視覚障害を持つヒロインと仲良しの主人公と。ちょっぴりわがままなヒロインが話題のホットケーキ店に連れて行け、と主人公にねだるのですが……。一生懸命な友情の気持ちよい話。

お姫様の願い 森永みるく

 今回は美羽の「藤原さんのお宅拝見」でした。クラスに友人らしい友人がいないという藤原さんのその理由の一端が窺えます。

神様の棲む森 伊藤ハチ

 お医者に救われた鳥が恩返しをしようと人の姿を得て、というお話。前号に掲載の「春のメヌエット」とは絵柄も変えている印象で、こちらは童話っぽい感じを意識したのかな。

真夜中のマーメイド カザマアヤミ

 単行本『星をふたりで』が今号と同日発売のカザマアヤミ。今回はタイトル通りマーメイドをテーマに。純朴感が可愛いのです。

お菓子の家(後編) 藤たまき

 少女アソートシリーズ。お姫様は前回バレリーナを得たところでしたが今回は集めた女の子たちのお披露目パーティーをしようと思いついたところから始まります。アソートのお菓子にはビターなものもある、という回でした。でもそれもおいしさのアクセント。

ピンク×ラッシュ TONO

 いつものサナでした。マールもいつもの通り。そろそろデレたりしないのだろうかと思うのですが、時々ちょっと同情的になっているのはデレの範囲なのかもしれない……。

★ ★ ★

 発売日の二日くらい前から『ひらり、』休刊の噂がネットに流れていました。vol.14が発売されてみると本当に最終ページに休刊の告知がありました。
 ああ、なんてこと。

 「「ひらり、」休刊と今後のひらり、コミックスにつきまして」という案内があり、掲載作の先行きも告知されています。

 『ひらり、』で初めて知り、百合以外でも単行本を集めることになった作家さんも複数いました。すでにファンであった作家さんの掲載があり大喜びもしました。これからも新書館ならではの未見の作家さんとの出会いが続くものと思っていました。

 2010年から四年、楽しく素敵な漫画との出会いの時間でした。

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