『白銀ギムナジウム』ひるのつき子
白銀ギムナジウム(上)(下)
ひるのつき子
一迅社
2014.10.18
九月、十月と百合姫コミックスでは同人タイトルの出版や『ひらり、』掲載作からの単行本化がありちょっとしたラッシュです。それらの作品の中で一番好みであったのがこの『白銀ギムナジウム』です。
『百合姫』11月号にお試しで部分掲載されていたものを読んで期待していました。
大正解。シンプルなお話の連作短編で群像劇的ではありつつメインストーリーの二人がいる、という感じです。舞台は近世的な雰囲気の漂う孤児院。作中では“寄宿舎”と呼ばれています。絵柄もお話の雰囲気も少女漫画調。ちょっとした寂しさ、メランコリックな雰囲気が全体を通じて存在します。少女が少女として残された猶予期間に自覚的であり、また寝食をともにする友人を特別な存在と認識することで「普通」の少女たちのありように違和感を持つ自覚的なアウトサイダーであったりと百合漫画的にとてもシビレル設定です。
一言にするなら「まっすぐ」。登場人物たちは必ずしも思いをストレートに行動に表しはしないのですが、心に抱える思いのまっすぐさが気持ちよいのです。漫画としてもそんなキャラのまっすぐさをまっすぐに描いていることにとても好感が持てます。このまっすぐさは元が同人誌として描かれたものであるということもあるのかもしれません。商業誌だとプレーンでまっすぐでシンプルであるがゆえに描きにくいタイプのお話/作風に思えました。
登場人物はエイミーとフィオナの二人をメインにトト&エリス、アテナ&クロエのエピソードが配されます。双子を自称する仲の良いエイミーとフィオナ。後半には孤児院の運営状況なども織り交ぜられ連作短編の形で緩やかに繋がるひとつのお話になっています。
Kindle版のサンプルも手軽に見られるようになってきていると思いますし、絵柄や作風も含めて好みに合うか試し読みをお勧めしたいです。
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