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映画『花とアリス殺人事件』

『花とアリス殺人事件』感想

 新宿バルト9にて『花とアリス殺人事件』を観てきました。

花とアリス殺人事件 入場者特典

 面白かった。
 とても。
 上映時には客席から幾度もくすくす笑いが湧いて雰囲気が良かった、と書けば面白そうなことが伝わるのではないでしょうか。平日夕方の公開初日とはいえ客席も七割が埋まっているかどうかでしたし上映館もあまり多くないようですが、もっとお客が集まってもいい映画だと思ったのでした。

ロトスコープ

 『花とアリス殺人事件』は『花とアリス』という作品の前日譚です。実写であった『花とアリス』に対し今作はロトスコープという方法を使ったアニメーション。実写撮影した映像から線画をトレースして起こすタイプのもので、動きのリアル感とアニメならではのイメージに寄せたキャラクターが同居する独特の印象がありました。押見修三の『惡の華』もこの手法でアニメ化されましたっけ。『花とアリス殺人事件』では上の予告編のようにキャラデザインがジブリ的というか細田守的というか、アニメっぽい萌えからは距離をおいたプレーンな感じで好感が持てました。
 ロトスコープという方法のために実写的な感覚のカメラワークが目立ち、なじみのあるアニメとは違う演出で満ちていたのが新鮮でした。3DCGも使われていたそうですがロトスコープで描かれた部分も実写という三次元世界がベースであったためか「ここ3DCG!」と一目で見分けられるような境界はなく馴染んでいたように思います。こんな映像なら、ぜひまた見たい!
 3/6にCG部分のメイキングをニコ生で見たのですが、想像以上に3DCG率が高く50%を超えていたとのこと。驚きました。

ストーリー

 主人公・アリスが引っ越してきた隣の家には引きこもりがいて、編入したクラスは排他的で何やら殺人事件があったらしいという噂があり、と雲行きの怪しいシチュエーションから始まります。殺人事件とはなんなのか、というところをコメディ的な要素を織り込みつつ追いかけていくストーリー。前作『花とアリス』の主役二人の出会いを描いたもの。日常もので超常設定やSF設定はなし。
 暴走気味でトラブルメイカーな女子中学生・花とアリスが引き起こすおもしろおかしい展開が魅力。エキセントリックなクラスメイトやティーンらしい思い込みを反映した集団の奇妙さも面白かった。弦楽器の音楽が流れる予告編からは雅であったりお上品であったりのマリみて的な雰囲気を想像するかもしれませんがそれはごく一部で、アリスと花が織り上げていくざっくばらんな、カジュアルな友情がメインです。バレエの要素が少し盛り込まれ、華やかな一面もいいな、という感じ。
 実写版の前作『花とアリス』を観ていると「あ、これあのシーンの場所だ」「あのキャラだ。そっくり」といった楽しみ方もできるのは確かですが予備知識ゼロで観てもきっちり100%楽しめるはず。一番のお気に入りシーンは最後に二人が挨拶するところ。
 あ、少女二人の出会いと友情のお話ですが、百合恋愛要素はないです。念のため。

まとめ

 ガーリー、あるいはガーリッシュというキーワードに惹かれる人に勧めたいです。前作『花とアリス』が気に入っていた人にももちろん。吉田秋生の『櫻の園』が好きな人にも楽しめるはず。萌えアニメやマリみてみたいなのを期待するとちょっと違うかな。アニメファン向けな感じのしないアニメ。かつサブカルかぶれっぽいオシャレさが鼻につくこともなく。岩井監督の映画らしい美しい光の演出があちこちにありました。幅広い人が楽しめて、笑いをこらえ、こらえきれずに笑い、等身大よりちょっと美化された青春の「いいな」があって気持ちよく劇場を後にできる、そんな映画です。
 オススメ。

 Blu-ray版も8月には発売になるようです。
 道満晴明によるコミック版もweb漫画誌・やわらかスピリッツ上で連載していて小説版とも映画とも違う味わいでありつつとても面白いです。
 乙一による小説版も出ていてこちらは映画に沿いつつ随所で設定を変えながら『花とアリス殺人事件』らしさに細かい部分まで気の払われたノヴェライズとなっています。ボリュームはさほどないので気軽に読めるはず。

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