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『ほんとのかのじょ』今村陽子

ほんとのかのじょ
今村陽子
新書館ひらり、コミックス

 『ひらり、』vol.7〜14掲載作と描き下し2編を収めた「ほんとのかのじょ」シリーズ単行本です。「ピュア百合」を謳うアンソロジー上で、少女漫画的な華やかさと萌えを兼ね備えた絵柄——にも関わらず、SMです。といってもラバースーツにムチや蝋燭、というSMイメージの典型ではなく、天然SのゆーかとドMを自認するもえの言葉や仕草の中にSMが薫る女子高生二人のハートフルなお話。
 仮面優等生をやっているゆーかは実はかなり毒のある性格なのですが、そのゆーかにもえが告白するところから始まります。百合漫画らしい繊細な感情の描写と、かなり手遅れ感の漂うもえの性癖と、そんなもえに振り回されながら確実に天性のSを開花……いえ、素に近いところを見せていってるのであって元々あったS成分なのかも。SMといってもきっと様々で、ほんとうに人を人とも思わない&そう扱われたいタイプから思いやりある主従・加虐被虐関係まであるような気がするのですが、この漫画のゆーか&もえは愛情表現としてのSMであるようで、非常に美しくお似合いの関係を築いていきます。「これはちょっと」と引いてしまうようなヒドさはなく、かといって「Sっぽい」「Mっぽい」だけで終わらないコアな要素も含みます。SMと百合漫画の相性の良さが爽やかに際立ちもしていて、もっと続けば良かったのに、と掲載誌の終了があらためて惜しく思えたのでした。
 描き下しの最終話も素敵で良い幕が引けたな、とも思います。

 いや、ゴタクはいらんのでした。ゆーかももえも大変可愛らしく、ただそれだけで痺れてしまいます。SMぅ?と抵抗ある方にこそオススメ。

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