初回のレビューよりも偏った視点での2回目のレビューとなります。
パソコンvs.ポメラ
DM200購入までは8inch画面のWindowsタブレット――通称艦これタブレットを使用していました。MicrosoftのBluetoothキーボード・Universal Mobile Keyboardとの組み合わせで。
この組み合わせは割と気に入っていたのですが不満もありました。
- Bluetooth接続が時折不安定になる。
- 取り出してから使えるまでが少し面倒。膝の上で打鍵できない。
前者はタブレットPCが安物であったせいでWiFiのコントローラチップに評判の悪いものが搭載されていたためでした。Bluetooth自体は、たとえばApple製品同士であればまず問題が出ないのです。2万円ではなく4万円のWindowsタブレットを買っていればほぼ遭遇しない問題だったと思います。
後者はパソコンとキーボードが別々であることの問題で、私の機器選定ミスでした。そもそも私はタブレットPCをキーボードなしの純タブレットとして使わないのです。つまり、私が買うべきだったのは艦これタブレットの前に使っていたVAIO type Pの新型でした。でもその後継機がなかったのです。 キーボード主体で使うモバイルPCがない!という時代になっていました。
ポメラDM200登場
そこに登場したのがDM200でした。艦これタブレットのテキスト端末としての面倒くささにDM100を検討していたのですがDM100は液晶がいまひとつ気に入らなかったり、キーボードの評判に気になる問題があったりと購入に踏み切れませんでした。が、発売19日前に発表されたDM200はどうやら私の求めるものに非常に近い様子。しかもアウトライン機能としてwz形式を採用していました。私がとても気に入ってるタイプのアウトラインで、この時点で購入に傾いていました。
発売日に家電量販店に展示品を触りに行き、数分触って購入を決めました。
DM200の良いところ
10月21日の発売日に購入し二週間ほど使ってみた実感は「買って良かった!」です。
スペックに目新しいところはありません。キーボードはHappy Hacking Keyboardや東プレと比べると当然「HHKのがいいよ」となりますし、筐体も「VAIO type PやMac Book Airみたいな製造技術を投入できればしっかりしたままもっと軽く薄くできたのに」という印象です。
でも、でもですね。ポメラは文房具です。スペックや材料を売りにする最先端グッズでなくていいのです。
液晶を保護するためだろう過剰なまでにクリアランスの確保された画面側。たわみらしいたわみはなく音も静かで、でもひっかかりのないスムーズなキーボード。「↑」キー以外は配列も無難です。
ハードウェアだけでなくソフトウェアもよく出来ています。WindowsやAndroid、Macのようなマルチタスクを前提にしたものにはない、どんな操作にもダイレクトに反応するレスポンス。MS-DOSの頃のテキストエディタを使っているかのような感覚です。細かく設定できる編集画面の設定。きれいなフォント。メニューからの操作もできますが、ショートカットキーの利用を前提にしている点も見逃せません。慣れて、操作が手に馴染んでくるとマウスのようなポインティングデバイスの煩わしさが際立ちます。
文房具としての使い勝手は本当によく練られていると思うのです。
ATOK問題
少しばかり信仰に近い話をしましょう。
ATOK、パソコンでも非常に人気が高いです。WindowsやMac OSの標準かな漢字変換は「ばか」でATOKでないと使いづらい、というのが多くの人の印象でしょう。
でもATOKはかなりクセの強いかな漢字変換です。特にJISかな入力者には首の傾ぐ仕様が多いです。「!」や「?」をはじめとする全角記号の入力が煩雑であることやWindowsやMac OS標準のかな漢字変換よりワンアクション多くなりがちなショートカットキー。ポメラのATOKにも特徴は引き継がれています。
よくいわれる変換効率の高さも、ビジネス文書ではとても便利ですが小説創作に向いているかは一考の余地があります。キャラクターごと、視点ごと、心理ごとに選ぶ変換候補も「バカ/馬鹿/莫迦/ばか」と変わります。そこに「間違っていない」結果を先に示されるのは――表現の幅が狭まるように思うのです。
また一度前に進んだ思考を引き戻さないことも大事なこと。長く入力してしまった文章の先頭近くで意図しない変換をされていた場合、そこに思考を巻き戻すのはとても煩わしいことです。
言葉選びは選ぶときにはしっかり吟味し、振り返らないことで楽に進められます。
私はほぼ単文節入力・変換・確定でかな漢字変換を利用しています。可能であれば学習も切り、決まった回数変換操作すると決まった候補が出る、という状態にして、打鍵する指の動きを先行してタイピングの予定スタックに積み上げておきます。思考速度には波が出来ますが、タイピングは80%〜90%程度の速度で切らさずに継続する、という風に入力したいのです。今はそれができるかな漢字変換環境はは少ないのですが。
毎分二百後半~三百音を入力していたかつての業務用ワープロの熟練タイピストはそういうやり方をしている人が多かったらしく、それを真似しています。たぶん、タイピストにとって高速で負担の少ないやり方は、文章を作る上でも快適なはず……。
というわけで、私はATOKはその実用性以上の需要で搭載されている気がしています。でもその賢いATOKを動かすためにハードウェアの処理能力が上がり、テキスト編集全体に恩恵がもたらされアウトライン機能搭載の余裕も生まれたと思えばありがたいのかも……。
辞書
DM200に搭載された辞書を使っていて思うのですが、これ、ATOKの拡張辞書でも良かったのかも。パソコン版ATOKにはユーザ辞書とは別に、電子辞書的な機能をかな漢字変換に組み込むオプション製品があり、その明鏡国語がとても使いやすいのです。インターフェースもかな漢字変換に組み込まれているので、DM200の切り替え式の類語・国語・英和・和英辞書よりもシームレスに使えますし。どうせ同じ辞書を載せるなら、キングジムさんにはATOKオプションの辞書も検討して欲しいところ。
搭載辞書のスペックも気になります。類語、国語、英和、和英の四つの「MX版」なのですが本来の「角川類語国語新辞典」や「明鏡国語辞典」と比べるとコンパクト化されているような気がします。(別記事にまとめました)また検索機能が見出し語しか検索しないため、EPWING辞書ツールのように語釈部分まで含めた「全文検索」ができず搭載語彙数の実数よりずっと少ない言葉しか探し出せません。辞書そのものは搭載品で十分な気がするので検索機能のブラッシュアップを望みたいです。
あと、文字パレット。国文系の作業や難読名前の入力ではATOKではなくこちらのお世話になる可能性が高いのですが、文字コードと対応文字の表示しかないシンプルさで実用性に疑問を感じます。文字パレットについてはWindowsもMacもATOKもそれなりに使いやすいよう工夫されているので真似しちゃえばいいのに、と。漢字字典を積んでくれてても良かったかも。
ショートカット
キーボードだけで使うポメラ。使用頻度の高いショートカットはすぐに覚えますが、それほどでもなく覚えるのに時間がかかりそうなショートカットキー一覧を液晶の両脇に貼ってみました。滅多に触らないだろう設定関連を除いた自作・精選ステッカーです。
ケース
DM200用の純正ケースを店頭で手に取ってみると外見は気に入ったのですが、少し嵩張り、重く、「バッグの中で埃だらけにならなければいいや」くらいのケースが欲しかったこともあり、隣にあったDM100用のネオプレーンのケースを購入。ぴったりでした。
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