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小説創作のための pomera DM30 vs. DM200

pomera DM30 購入

 6/11にDM30の展示機に触れて気に入り、JustMyShopでクーポンやらポイントやらを合わせると他の通販最安値より安くなったのを見てポチ。6/13に届きました。

pomera DM30購入

 店頭展示で触れてDM200の方が小説創作で便利なことはわかったのですがそれでも購入したのは

電子ペーパーの見え方がすごく好きだ……。

ということに尽きます。表示レスポンスが悪いというデメリットを許容できるかどうか試してみたくなりました。

解像度比較

pomeraシリーズ解像度比較
モデル 画面サイズ
inch
横pixel数
dot
縦pixel数
dot
解像度
dpi
DM10 4.0 640 480 200
DM20,25 5.0 640 480 160
DM5 4.0 320 240 100
DM100 5.7 800 600 175
DM200 7.0 1024 600 170
DM30 6.0 800 600 167

サイズ比較

DM200 vs. DM30 @スペック

DM200 vs. DM30スペック比較
機能\機種 DM200 DM30
サイズ 263×120×18mm 156×126×33mm
重さ 580g 450g(電池無)
505g(電池込)
駆動時間 18時間 20時間
最大編集文字数 約10万字 約5万字
文字コード utf8、ShiftJIS ShiftJIS
フォント 明朝、ゴシック ゴシック
大きなサイズのフォントはアウトラインにぎざぎざが出る
アウトライン
フレーム
ページ単位での区切り表示がなくなり機能の意味がわからなくなった
×
カレンダー
電子辞書 類語、国語、英和、和英 国語、英和、和英
データ転送 QRコード、USB接続、SDカード、WiFi QRコード、USB接続、SDカード

かな漢字変換

 DM200とDM30の変換精度を比較してみます。素材は青空文庫の「走れメロス」。

 メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此のシラクスの市にやって来た。

これを一切の修正なしにできるだけ長い文節で変換させて入力してみたものです。は完全に誤変換、は不正解ではないけれど原文通りではない変換。

 メロスは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の王を覗かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ、メロスは、むらの牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮らしてきた。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。今日未明メロスは村を出発し、野を越え山超え、十里離れたこの氏ら楠位置にやってきた

pomeraDM200

 メロスは激怒した。必ず、かのじゃ地暴虐の王をのぞかなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮らしてきた。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。今日未明メロスは村を出発し、や真声、十里離れたこのシラク巣位置にやってきた

pomeraDM30

ファーストインプレッション

 DM2桁の折り畳みキーボード機としては歴代で一番大きく重く、畳んだ状態で鷲掴みにした手応えはずっしり。厚みがかなりあります。とはいえDM200はB5長辺の収まる鞄を用意する必要がありますがDM30であればもっと小さいハンドバッグ、クラッチバッグの類で十分で携帯性はDM200との比較では良いです。厚いけど。

 電子ペーパーは液晶とは質感が違います。「見やすい」とか「目に優しい」かは一概にいえませんが光の当たり方に対する見え方が落ち着いていて大変好ましく感じます。ベゼル部分の段差が画面に影となって落ちることもあり表示領域周辺に余白が欲しくなります。

 DM200に比べてDM30の方がはっきりと良いとわかるのが剛性感のある筐体。DM200はDM2桁シリーズに比べるとやや心もとなく、画面側の蓋を開閉するときに「ぎしっ」という感触が伴います。DM30は蓋の開閉もキーボードの展開もかっちり。歴代ポメラの中で一番しっかりしている感触。

 画面表示の遅い電子ペーパーが前提となる操作は独特です。▲▼◀︎▶︎キーを一度だけ押すとパソコンや他のpomeraと同様一文字・一行カーソル位置が動きますが、長押しにすると数文字・数行単位でカーソルが飛び思った位置で止めるのが難しいです。Ctrl+◀︎▶︎の一単語単位のジャンプやAlt+▲▼◀︎▶︎の行頭・行末ジャンプ、数行スクロールを併用するのが快適。……なはずですが一単語ジャンプのCtrl+◀︎▶︎◀︎▶︎のみの動作と同じ。うーん。(初期ファームウェア)

 DM30の検索・置換機能は高速です。DM200より圧倒的に速いです。

 キーボードの折り畳みギミックは手堅い機構でportabookや旧DM2桁機のようなトリッキーさがなく、開閉もスムーズで打鍵時も十分に安定。DM100や旧DM2桁機よりも質の良い感触です。大抵のノートPCに負けない剛性感。DM200比ではキーの押し下げが少し硬く、底突き感はかっちり明瞭です。DM200の方がわずかに静かでソフト。

 eneloopでの実駆動時間はカタログ値の20時間しっかり持つようです。

 microUSB端子に電力を供給すると電池不要で稼働します。eneloopを取り出しての充電中でも利用可能。家電量販店の店頭デモはUSBからの電源供給で動いていました。

おもしろポイント

 [設定]-[電源の管理]画面で「パワーオフ画面」を「編集画面」にしておくと電源が切れていても編集中の画面を表示したままにできるのは電子ペーパーならでは。

 キーボードの折り畳む部分、片側二カ所ずつに磁石が仕込んであり、下向きのまま画面を開いてもキーボードが不用意に開いたりしません。芸細。

Q&A

 

 

 

  • :電子ペーパーは見やすいですか?
  • :紙の印刷物よりは地の白色は暗く、黒も真っ黒ではなく、紙の本より少し明るい場所が合います。屋外のようにうんと明るい場所は液晶より圧倒的に見やすいです。逆にコーヒーショップやファーストフード店だとやや明るさが足りず見づらいです。
  • :電子ペーパー画面の反応が遅いそうだけれど入力速度に影響はありますか?
  • :速く打鍵してもキーの取りこぼしはないため表示を待たずにタイプできる人は問題ないと思います。変換結果の選択や範囲指定、カーソル移動では操作性はかなり悪いです。
  • :電子ペーパーには残像があるそうですが気になりますか?
  • :紙書籍の裏写りと似た感じです。時間が経っても残像は勝手に消えず残ります。私はあまり気にならないです。
  • :折りたたみ式キーボードは不安定では有りませんか?
  • :机の上や硬いカバンの上で広げる分には実用範囲。膝の上など柔らかな場所では重心がヒンジ寄りであることが災いし、手前側が浮き気味になってかなり打鍵しづらいです。
  • :DM30とDM200、打鍵感はどっちが良い?
  • :私はDM200に軍配をあげます。
  • :変換精度は良いですか?
  • :DM200と比べると悪いです。旧DM2桁機よりは確実に良く、DM100と比較しても改善されていると思います。【単語登録】【ATOKオプション】に補助辞書が20ほどあるので用途に応じて追加すると使いやすくなります。
  • :起動時間は?
  • :画面のある蓋を開いた段階で電源が入り4〜5秒で使用可能になります。DM100、これまでのDM2桁シリーズよりは明らかに遅くDM200とほぼ同じ〜わずかに遅いくらいです。
  • :ファイル転送手段が減ったのは影響ある?
  • :DM200にはあったWiFiとBluetooth機能がDM30では無くなりましたが私の使い方では特に不便は感じません。メモはQRコードのテキスト転送で手軽にスマホに送り込み、小説はUSB経由でPCと接続してrsyncコマンドで同期させています。

小説創作におけるDM30 vs. DM200

 DM200で小説創作に役立った機能の筆頭がアウトラインです。DM30のアウトライン機能もDM200に搭載されたものと同じです。DM200とDM30では画面の広さが違い、DM200の方が広々と使えるのは確かですが、実用上の差はないように思います。どちらでもアウトライン機能の恩恵は十分に得られます。

 DM200、DM30で共にありながら機能が違うものに「フレーム」があります。DM200では一行文字数・一ページ行数を指定して表示する機能で原稿用紙換算をする際に便利だったのですがDM30では同じ名前の機能でありながらページ区切り・ページ数が表示されず使い途のない機能になってしまいました。

 搭載電子辞書においてDM200とDM30で類語辞典の有無で差があります。

 かな漢字変換の変換精度、編集可能文字数、使用可能文字コードといった部分でDM200の方が長文・小説作成に向いていると思います。表示の見易さは暗めのところでも不便のないDM200が優位でしょう。

 DM200の内蔵バッテリーとDM30の単三電池も優劣はつけ難く正直「どちらでもいい」です。

DM30への不満

 購入直後に明確に不満を感じたのは

  • 取扱説明書の公開が発売日以降で予約のための情報が不足していた
  • 折りたたみモデルとしては大きく重くなった

といったあたり。

 ファームウェア更新で改善を期待するポイントはたくさんあります。

  • 編集可能文字数をDM200並みに。できれば30万字程度に。
  • Ctrl+F7で単語登録機能を呼びだした際に範囲選択してあった文字列を登録語句欄にセットして欲しい。
    ファームver1.1にて対応されていました。Nice!
  • Ctrl+◀︎▶︎のショートカットを取扱説明書通りに単語単位でカーソル移動できるように。
    (2019/12/9 キングジムへの問い合わせの結果この「単語単位でカーソル移動」は英文でのみ機能するものだそうです。えー?って感じですね。)
  • 縦書き表示時のAlt+◀︎▶︎▲▼のスクロール、行頭行末ジャンプのショートカットが混乱している。ATOKの操作も含めて見直しを。
  • フレーム機能をDM200相当に。
    (2019/12/9 キングジムへの問い合わせの結果フレーム機能は現状で仕様通りだそうです。行/一行文字数の双方を入力させておいてその一ページ分に下線を引く機能って意外過ぎました。DM200との違いを挙げて質問したのですが「DM200は上位機種にあたり、DM30とは仕様が異なります」とのこと。残念な回答。)
  • メニュー【書式】【カーソル位置】を「終了時の位置で開く」に設定しても現在編集中のファイルの電源オンオフにだけしか適用されない。文書の読み込み時でも保存時のカーソル位置に復帰して欲しい。
  • 表示に先行して入力したキー操作が画面に反映されないことが(時折)ある。しばらく待った後で一動作加えると画面が更新されるが、キー入力の取りこぼしはなく余剰な動作が含まれた結果となっている。描画更新不足の改善を。
  • 電子辞書機能、単語登録画面において稀にかな入力モードであったのがローマ字入力モードになってしまうのをかな入力モードが保持されるようにして欲しい。最近は発生していないので取り消し。
  • かな入力モードにおいて全角の英数記号を容易に入力できるようにして欲しい。例:入力「ぬふぁぅぇぉゃゅょほ」(Shift併用)→「!"#$%&'()=」(PC版ATOKではF11「読みの英字/かな置換」で変換可能)
  • 「文字情報表示」をF7のショートカットから呼び出すような場合、機能終了後はメニュー選択モードではなく編集画面に直接戻って欲しい。単語登録なども。
  • カーソル移動やスクロール、検索移動した後で最後の編集箇所に戻れるキーショートカットが欲しい。
  • 編集画面側にフォーカスがある時に前/次のアウトライン項目へ移動するキーショートカットが欲しい。(DM200ではCtrl+▲▼) 表示レスポンスの悪い電子ペーパー向けにはより多彩なジャンプ機能・ショートカットが要るような気がする。

等。

 DM200相当の中身を期待するならばDM200を使い続けるのが良いようです。今のところ電子ペーパーが面白くて楽しく使っていますが、DM200で作成中の小説がDM30の分量制限に引っかかってしまい作業を引き継ぐことができません。分割して対応すれば良いのですが、分割管理の手間とリスクを取るくらいならDM200で作業します。DM200も初期ファームでは5万文字が編集上限だったので割り切れば良いのはわかっているのですが……。
 小説創作をはじめとする長文用の機種ではなくもう少し気軽な用途が向いているというのが第一印象でした。

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