VRChatで朗読会
朗読
VRChat、リアル知人ではやっている人が見当たらなくて一人きりで始めたのが四月後半。初心者向けガイドやquest向けの集会をVRChatイベントカレンダーで探して参加してみていたのですがそんな中に「日曜夜の持ち寄り朗読会」というものがあり、楽しく聞きに行っているうちに朗読の実践もしてみたくなりました。
機材
本だけあれば特別な機材はいらない、のは直接対面する朗読会での話。
oculus questにはチャット用のマイクも内蔵されていて、環境音・雑音を拾いにくく、かつサ行や撥音の突き刺さる音も緩和してくれているらしい優れものではあるのですが、HMDだと手元にある紙の本を見ながら朗読することが困難です。(questで朗読していた方もいてHMDをずらして隙間から原稿を読んでいるとのこと……なのですが明らかに朗読スキルが高く原稿内容もほぼ暗記するくらいまで読み込んでいらしたように思われ真似ができない)
デスクトップPCを購入したのだから、HMDなしでのVR朗読を試してみよう!と機材での解決を計ることにしました。
用意したのは以下。
ノイズリダクションツール・RTX Voice
マイクはAmazonで売っていた三千円弱の「自称コンデンサマイク」で電気回路的なホワイトノイズは皆無ですが音質は……1500円くらいのダイナミック型と大差なさそうなもの。これだったら2000円くらいのUSBヘッドセットで良かったかも。
RTX VoiceというのはnVidiaのグラフィックチップ用のノイズキャンセルツール。RTXシリーズ用ですがGTX1xxxシリーズでも(少し手間がかかりますが)動作するようです。これ、設定が「チェックをひとつ入れるだけ」なのに効果は絶大で、開けた窓から入り込んでくる都市部の騒音がほぼカットされます。声の質の方は……うーん、ON/OFFで変化しているのかわかりません。音質に拘りがある方は動画実況用ツールで細かくフィルタの設定ができるものを使うのが良さそう。
朗読してみた
道具を揃え、タイトルを選び、ボイレコに向かって四回ほど練習して、前述の朗読会で朗読に挑戦してみました。題材は「断Φ圧縮」草野原々(『SCI-FIRE』文学フリマ2019年秋発行号)。SF小説です。同人誌から選んだタイトルですが作者の草野原々はプロのSF作家で「今のSF」で一回で読み切れるコンパクトな話をとチョイスしました。小説としては短い部類ですが、朗読にはおよそ20分かかります。
ああ、棒読み、加速する早口、回らない呂律……。
当日の朗読会の参加者は25人くらい。朗読中の聞き手は基本マイクmuteで人の気配もありません。目の前に並ぶ人々がナスかカボチャのようです……いや、ほんとにカボチャ型のアバターもいました。
練習の段階から「抑揚つけてキャラを演じようか淡々と読もうか」というのが決まらず、決まらないまま朗読会での実演となり、読んでいる最中も迷いっぱなしでした。
ライブの朗読ということ
たとえネット上の空間であっても人が集い、壇上に立つ人と聴衆とに分かれるならばライブとなります。
とはいえ、朗読会で聴衆として訪れる人の多くはHMDを使わないデスクトップでの参加なのでしょう。ほとんどのアバターは微動だにせず、気配そのものがありません。ネットの向こうでは飲食しながらであったり、トイレに立ったり、傍らでSNSを覗いていたり、テレビがついていたりするかもしれません。
それでも、VR朗読会はライブなのでした。聴衆を一定時間縛り付け、耳を傾けさせる。他人様の時間を「本」という形の創作よりも激しく奪うのが「朗読」なのだと、朗読会に聞きに来た人々の前に立って実感しました。いただいてしまった時間と引き換えに、ふだん読まないジャンルとの出会いになったら良いな、とも。
やってみたかったこと、できたこと
VR朗読会ではやってみたいと思ったていたことがいくつかありました。
- quest用アバターにスピーチプロンプターを仕込む
- アバターから朗読中のテキストを放出し、(VRChatの)朗読ワールドのパーティクルライブのようなことをする
- 朗読中に書誌情報を表示しておく
- 朗読専用アバターで(私自身の)気分を盛り上げる
一番やりたかったのは「questで使えるスピーチプロンプター」を製作することだったのですがVRChatでは直接テキストデータを扱うことができず、画像化・3D化して処理することになるようです。朗読原稿分を画像化してアバターに持たせるとデータ量が肥大化してしまい重いアバターとなってしまいました。とても実用にならない、ということで却下。まだ諦めていませんが。
当日にできたのは「書誌情報の掲示」だけでこれもquestユーザーには表示できていませんでした。(オブジェクトの表示/非表示切替ツールを適用するとquestではpoor判定になってしまうのです)
朗読そのものの練習ももう少ししっかりし、朗読向きの素材をより広くから探せると良かったな、というのが反省点となりました。そしてまた紹介したい作品を見つけたら、再挑戦だ!
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