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VRChatで『#Mojika朗読会』イベントを開きました

world:Mojika

2022年2月中旬、VRChatに“Mojika”というworldが登場しました。

 中島敦の『文字禍』をテーマにした素敵なworldです。霧に閉ざされた迷宮の図書館を『文字禍』の文章たちがさ迷います。2月末にはquest対応もなされました。

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イベントがしたい!

 このnemurigさんの“Mojika”を訪れて思ったのが「ここで朗読イベントをやりたい!」でした。

  • 多数の朗読者が
  • “Mojika”world中に散り
  • 各々『文字禍』を朗読する

 思い浮かべたのはトリュフォー監督の映画『華氏451』のラストシーンでした。薄く霧の漂う世界で大勢が物語を暗唱しながら歩き回るのです。あれの『文字禍』版! 文字の精霊たちの呪いを言霊にのせて、送り出す。そんなイメージ。
 無謀な思いつきです。多数の朗読者を私が集められるでしょうか。集まってもらったとして、イメージしたような素敵な光景になるのでしょうか。朗読者や聞き手に楽しんでもらえるでしょうか。
 やってみなければ始まらない、ということで企画しました。

準備

 具体的にどんなイベントにしたらイメージを顕現させられるだろうと考えました。

  • 多くの人に気軽に訪れてもらう→publicインスタンスで開催
  • 多くの人に朗読してもらう→「飛び入り朗読歓迎」をアピール
  • 朗読者の核になる人を確保しイベントの最低規模を担保→「飛び入り可」とともに「事前登録」も併用。事前に五人の朗読者に登録いただいた。
  • 告知画像でイベントのイメージを伝える

というわけでこんな企画&告知になりました。

Mojika
#VRChat にて #Mojika朗読会 を開催します。ワールド『Mojika』に集まりワールド内のあちこちに散って中島敦『文字禍』を朗読するイベントです。
聞き手は自由にjoinしてください。
朗読者は以下のフォームに登録いただくとこちらからfriend申請、直前の説明(private・21:50位~)でのinviteをお送りします。
当日の飛び入り朗読者も歓迎です
・複数の朗読者がワールド内に散在するパフォーマンス的イベ
・quest対応
・満員になった場合複数インスタンス化します
・ワールド設置の『文字禍』本はglobalの一冊のみです。朗読原稿は朗読者側でご用意ください。
aozora.gr.jp/cards/000119/f
・23:00頃に朗読者はworld中心の広場へ

 

3/18(金)
22:00~23:00
「藤あさや TouAsaya」の立てるPublic「Mojika」インスタンス

 

朗読者、聞き手の双方を募集します。
参加方法は以下のスレッドに

 告知をしてしまったらもう後戻りできません。
 マネージメント力に乏しい私にできるのは

  1. twitterやイベントカレンダーでの告知。
  2. アバターに告知画像を仕込んで関連のありそうなイベントや朗読仲間を訪れて宣伝。
  3. イベントの様子を動画で記録。できれば動画撮影スキルの高い人に頼む。

くらいでした。とにかく朗読と関係ありそうなイベントや朗読スキルのありそうなfriendをめぐって紹介して回りました。三番目は動画スキル持ちの心当たりの人とコンタクトが取れないまま。私のヘタクソな動画撮影で乗り切ることにしてイベントに臨みました。

イベント決行

 結論から言うと大成功でした!

 16人定員(33人まで入れる)のインスタンスが満員になり第二インスタンスを立て、最後はworld作者のnemurigさんがworld定員を拡張してくださりひとつのインスタンスに統合、中心部の広場にじわりじわりと集まって動画のようなフィナーレを迎えました。

 この光景が見たかったのです! いや、イメージしていたよりずっとずっと素敵な空間が生まれていました。美しいワールドだけでも為し得ない、人が集まるだけでも成立しない、“Mojika”で大勢が『文字禍』を読む、というこの体験の贅沢で美しいこと。最後に皆さんの朗読を止めるのが惜しくてたまらず終了時間を少し延ばし、終会の挨拶でも泣きそうになってしまいました。

 今回一度きりの体験が素敵なものになったのはworld作者のnemurigさんと参加いただいた皆さんのおかげです。本当にありがとうございました。

分析

 #Mojika朗読会を終えて振り返ってみればこのイベントはVRとの親和性が高かったのだな、と気づかされました。

  • 参加型――主役のパフォーマンスを観客が楽しむ、のではなく多数の朗読者がいて、朗読者は朗読者としての体験を、聞き手は霧の向こうから流れてくる文字とともにあちこちから聞こえてくる様々な人の朗読を体験する。
  • 分散――音楽のセッションやコール&レスポンスと違い、個別の朗読者がそれぞれ自分のペースで朗読するので「同期」の問題が起きない。(VRはネット越しのコミュニケーションのため、タイミングを合わせるような行動が難しい)
  • 個々人のイベント――VRSNSユーザーの、比較的個人主義的でありつつ人との繋がりも、という傾向とイベ内容が合致していた。
  • publicインスタンス――一時間の単発イベントでイベントの存在を知って訪れる人がほとんどでイベント趣旨が維持された。friendにjoinして来た人も集団ではなく個人として行動しイベント進行に沿った行動をしてくれた。
  • 朗読参加者多数――フィナーレで朗読者を中心部に集めたこと、原稿が青空文庫で入手可能なことにより、聞き手として訪れた方の中にも朗読側に回ってくださった人が多数いた。

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