『微化石』
微化石
国立科学博物館叢書
東海大学出版会
2012.7
四千円近い本ですが「安い!」と思いました。
印刷が良いです。判型は大きめの図鑑サイズ。印刷品質の良さと相まって大きく掲載された微化石の写真がとても見やすいです。内容は専門的ですが地質と化石の境界領域にあるという分野であるからでしょうか、一般向けの科学解説書に親しまれる人であれば専門用語でチンプンカンプンということもないはず。とりあえず単に化石が好きというだけで専門教育を受けていない私でも最後までしっかり読めました。
ただし、内容は微化石研究の現状をまとめたもので専門度も高いので、微化石そのものに関心のある人でないと読み飽いてしまうと思います。科学論文ほどは細々とはしていませんが説明されている中身は「論文まとめ」的なものです。図版も豊富ですが文章量も多いです。読み通すにはそれなりに時間がかかります。
2010年秋、国立科学博物館で「深海探査と微化石の世界」という展示が行われたのですが、その展示内容をより詳しくしたものという印象。
微化石が気になっている人は大型図書館や店頭でぜひ一度中を覗いてみることをお勧めします。内容のボリュームに驚くはず。そして欲しくなるはず。私も図書館に入っていたのをチェックしてから購入しました。
微化石ってなんだ?という人もぜひ図書館等で覗いてみてください。ミクロンサイズの驚異的な世界が待っています。ウイルスや細菌だと小さ過ぎて実感が湧きづらいかもしれませんが、砂粒サイズで骨格を持つ珪藻、ハプト藻、有孔虫たちの形の面白さは実感を持って迫ります。特に赤/青のアナグリフ画像は(メガネを自前で用意する必要がありますが)見応えあります。
珪藻などはお弁当箱というかセイロというか「箱」そのものの構造をしていてびっくりですし、ハプト藻の『300』(スパルタを題材にした映画)っぽさも面白いですし、有孔虫の一種のグリフシード(『魔法少女まどか☆マギカ』に登場するアイテム)めいた形も感嘆モノです。収録されているアナグリフ立体顕微鏡写真も立体感がしっかり感じ取れるので赤青眼鏡もぜひお試しを。
久々に、買って良かった、持っていて嬉しいと感じる化石本となりました。オススメ。
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