カテゴリー「音楽」の26件の記事

STAX SR-003mk2

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 そろそろ暑くなりそう、と使用感が少々暑苦しい静電容量型ヘッドホンSTAX SRS-3170Aイヤースピーカー部SR-307を装着感の軽いSR-003mk2に入れ替えてみました。以前から使っていたSR-001mk2(ポータブル型)で装着感が気に入っていたので同じ形の据え置き用を買ってみよう!と。一聴し。
「あ、これ、いい!」
 音の傾向も好みです。装着感もSR-001mk2のまま。
 SR-307はコントラストの強いくっきりはっきり、無音部分がとても無音に聞こえてポップスの多くには合うのですが、一方でピアノやヴァイオリンの残響がすっと消えて聞こえることもあってやや寂しく思う面もありました。ピアノでストップを開放してぎょわーんと音を響かせた時に、SR-001mk2で気に入っていた感じがなかったのです。一方でSR-001mk2は明らかに音がぼんやりしていて「ポータブル用のアンプだとさすがに辛かったかな」という印象でした。
 それがSRS-3170AのアンプSRM-323SとSR-001mk2とほぼ同じイヤースピーカー部・SR-003mk2と組み合わせてみると音の柔らかさ・コントラストが低めであるのはそのままに細かな音がすっきり拾えてくるようになりました。SR-307での「こんな細かな音まで拾えてくる……」みたいなびっくりする感じは薄くはなりましたが。

  • ケーブルはSR-001mk2と同じ細めのままジャック部分が据え置き機用になった感じ
  • 耳に触れる部分はカナル型イヤホンのイヤーピースそのもので、イヤーピースはSR-001mk2までの長円型から円型になっていた。取り付け部のイヤースピーカー本体側は長円型のまま。
  • SR-001mk2の購入時は最初はほんとうにぼけぼけの音がしていて次第に音が澄んでいったけれど今回は最初からすっきり澄んだ音がする。

 というわけで暑い時期はこの軽くて蒸れないSR-003mk2でお気に入りの音楽を聴こう、と楽しみになりました。

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DENON DA-310USB購入

DAC購入

 2017年秋にiMacを新しくした際、それまで使っていたM-AudioのAudiophileというDTM用オーディオインターフェースがMacOSの更新に追従できなくなってPCで音楽を聴く環境がなくなっていました。というわけでDACの更新をすることにしました。条件は、

  • STAX SRS-3170と接続して使う
  • PCと接続できるDAC
  • ハイレゾ(96kHz/24bit以上)に対応していること
  • DSDも聴きたい
  • LINEOUTの出力にアンプを通さないこと
  • Macの標準USBオーディオドライバで認識すること
  • あんまりお高くない無難な値段と品質

といったあたり。単体のDACというのは今はあまり流行らないようで商品カテゴリ的にはヘッドホンアンプ扱いのようです。FOSTEX HP-A4maranz HD-DAC1、あるいは近い価格帯の中国の新進メーカーのものも候補に挙がったのですが今ひとつ絞りきれず、上記の項目に確実に対応していそうなDENON DA-310USB(公式サイト)を買ってみました。オーディオものは商業レビューもAmazonや価格コムのカスタマーレビューもあてになりそうになりそうになく、けっきょくテキトーにポチ。

DENON DA-310USB/SP届いた

 届きました。

 Macだと接続も設定も簡単。ただ繋いで、OS標準の「MIDIオーディオユーティリティ」でフォーマットを選ぶだけ。ドライバのインストールは要りません。

DA-310USB+STAX SRS-3170(Classic System)印象

 ここしばらくはiMacのヘッドホン端子にSTAXを繋いでいたのでそれとの比較です。

DENON DA-310USB開梱

DENON DA-310USBをSTAX SRS-3170に接続

 音が、すっきりしました。

 四万円前後する機器を介した感想がそれだけというのもアレですが。本当にそれだけ。細かな音がよく拾えるようになったとか、ヴァイオリンの高い音がヒステリックじゃなくなったとか、低音がもんやりしなくなったとか、高くて細い音や低くてさっぱりした音がきっちり鳴るようになったとか、録音の良い音源が立体的に聴こえるようになったとか、音の鳴ってる空間が広く感じられるようになったとか色々ありますが、一言にまとめるとただ「すっきり」。以前のDTM用のユニットと比べても(iMacの端子と比べると変化の幅は小さいですが)同じような印象になります。STAXってこういう雑味のない音だった、みたいな感じです。

 波形の補完技術が効いているのでしょうか、youtube等の動画サイトやwebラジオの配信音声が圧縮されすぎてキョロキョロへんな音になったりすることがほとんどなくなりました。

 音以外について。
 稼働状態を表す小さな画面は有機ELだそうで入力の切り替えがタッチであったり、設置の縦横を自動認識したりのスマートフォン的なギミックがあるのを実物を手にしてから知ってちょっぴり感心したのでした。
 再生ソフトの側でサンプリング周波数を音源データのまま同期で出力してやるとDA-310USBの表示が44.1kHz、48kHz、96kHzと変わるのもちゃんとデータいじらずに出せているのがわかって良いです。

売り文句

 Advanced AL32 Processing Plus、DDFATMといった技術が宣伝文句に並んでいますがこれらはON/OFFできず、聴感上の効果は確かめようがないです。アナログ回路の設計や部品についても比較対象がありません。以前は見つけられた「同じ価格帯のものを買い揃え比較レビューするサイト」も見あたらなくなってしまいました。長く続く景気低迷のためでしょうか。

ハイレゾ

 DSDを聴いてみたい!と選んだDA-310USB/SPですがe-onkyoを覗いてみても追いかけているミュージシャンのDSD音源がありません。なんでじゃー。96kHz/24bitの音源も少ないし……。

STAX SRS-3170

 静電容量コンデンサ型ヘッドホンのSTAX SRS-3170というモデルを使っています。他にSR-001mk2という、同じくSTAXのポータブル静電容量型ヘッドホンの旧型機も。今回はこのSRS-3170をDENON DA-310USBに繋ぎました。
 STAXの静電容量型ヘッドホンは通常のヘッドホンとは仕組みが違うため専用のアンプ――ドライバが必要で、ヘッドホンとセットになったシステムが用意されています。SR-3170は十年ほど前の中級モデル。

 STAXの静電容量型ヘッドホンは音色の繊細さが高く評価されています。クラシックファンの支持の篤いメーカーの製品。一方でバスドラやエレキベースの力強さを楽しむようなタイプの音楽だとあまり迫力が出ない、ともいわれます。聴いた感じも概ね評判通り。クラシックの器楽曲、ギター曲、室内楽、小編成のオーケストラはとても素敵に聴こえます。これらはSR-001mk2でもSRS-3170でも同じで、据え置き型のSRS-3170の方がより繊細な音が拾え、より低音がタイトでしゃっきりし、楽器ごとの音の分離がより良いです。

 イ・ムジチのヴィヴァルディものやトラジコメディアの「アンナ・マグダレーナ・バッハのための音楽帖」、ヒラリー・ハーンのバッハなどをSTAXで聴くのがとても気に入ってます。DA-310USBでは以前のDTM用音源よりも気持ち、iMac直との比較ではずっと、楽しく聴けるようになりました。

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SONY MDR-EX750購入レビュー

SONY MDR-EX750購入経緯

 イヤホンを新調しました。SONYのMDR-EX750というモデルです。
 外で小説を書いている時に使っていたEtymotic ResearchのER-6を壊してしまい代わりになるものを、と家電ショップに試聴に行きました。お目当てはBluetooth接続のヘッドホン。外耳炎の経験がありイヤホン、特にカナル型ではいつ再発するかと心配だったのです。オーバーヘッド型のヘッドホンでそんな憂いとはおさらばさ!です。
 当初はAKG Y45BTのような小振りなヘッドホンにするつもりでしたが家電ショップで試聴して「う〜ん?」となりました。隣にあったAKG Y50BTを聴いてみたところ「こっちのがずっといい!」と。「ノイズキャンセラー付のも面白そう」ということでSONY MDR-ZX770BNも聴いてみると「インパクトないけどこっちも悪くない感じ」でした。でもどちらも大きい。売り場をうろうろして悩んだあげく毎日持ち歩く気にはなれそうもないということでイヤホンに路線変更です。

 脱線ですがついでなのでBluetooth接続の上級機SONY MDR-1RBTを聴いてみたら「値段の高い音がする!」でした。笑っちゃいそうですがほんとそういう感じ。有線ヘッドホンでも上級機はたいてい細かい音が拾えてすっきり聴こえ余計な音がしないのです。770BNも「欠点ないし質も高いけどコレ!という魅力がないような」とSTAXユーザ的には思ってしまいました。STAXは入門モデルであってもクラシックを聴いたときにダイナミック型やBA型にはない「うわー」と思える美しい響きがあったりします。欠点もありますが美点が吹っ飛ばしてくれます。いや、そういう買い物にきたんじゃなかった……。外で小説書きの友になる実用的な(あまり高価すぎない)ヘッドホン改めイヤホンを!

 有線イヤホンについてはろくに調べていなかったのですがぶっつけの試聴だけで選んでしまうことにしました。最初に目に留まったのがSONYのExtra Bassシリーズ。低音ずんどこはとても楽しそうです。外出時には特に。ところが試聴してみると「……?」でした。うんと低い音が出てるわけでもないし地響きを感じるわけでもない。力強いわけでもなく引き締まった低音でもなく。まどマギの『Magia』やパイプオルガン曲を低音の目安にしているのですがどちらも楽しくない……。以前使っていたAERIAL7TANKの楽しさと比べると残念な感じです。
 家電ショップでは適当に目についた製品を試して歩いたのですが、良い感じに聴こえたのが今回購入したSONY MDR-EX750でした。率直にいえば無難な音なのですが、1万円帯では価格の割に質は良さそう。細かな音がよく聴こえ、試聴の曲を色々試してもおかしな鳴り方をする曲がないのです。10本くらい試してみると無難なモデルが良いような気もしてきます。試聴も飽きてきたのでこれでいいやとSONY MDR-EX750にしました。

MDR-EX750ファーストインプレッション

 帰りの電車で早速聴いてみました。

  • 遮音性はそこそこあるのに車内アナウンスはしっかり入ってくる
  • 低音はそれなりに出てる
  • タッチノイズがEtymotic Research ER-5より少ない
  • MDR-1RBTと似て優等生的な高価格帯の音

 好印象です。クラシックでもJazzでもゴシックメタルでもアニソンでも試した範囲ではおよそ苦手なジャンルがありません。低音はちゃんと出てます。Extra Bassシリーズより低いところまで引き締まった低音が鳴ってる気がします。歩きながら聴いても自分の足音やタッチノイズがうるさすぎるということもなく、ジャンルを選ばないだけでなくシチュエーションも広く対応するようです。

 化粧箱はそれなりに見栄えするものではありますが1万円弱の製品ならもっとシンプルなパッケージでも良かったような気がします。ちょっと邪魔でした……。

MDR-EX750おうちで比較

 自宅でも聴いてみました。EX750。
 結論からいうと「アンプ!」でした。iPod touchと据置DACのヘッドホン端子とを比較してみたところ少し印象が変わりました。iPodのヘッドホン出力は音量自体はそこそこ出せるものの駆動能力は低めだったのを思い出しました。EX750では出力に余裕のある据置DACとiPodの差が音の線の細さに出ました。iPod touchでは残響のような成分が減ってしまいます。試聴の際にExtra Bassシリーズが残念に感じられたのはiPodの駆動能力が足りてなかったのかも。
 ポータブルアンプ持ち歩けってことかな……。それはさすがに小説書きの友からは外れてしまっているような。

 据置DACに繋いだMDR-EX750ですがクラシックが(ポータブル用途としては)まあまあ楽しく聴けます。少し大きめの音量で音に包まれる感じにするといい感じ、はダイナミック型共通。トラーゼのプロコフィエフ・ピアノ協奏曲。ベロフのドビュッシュー前奏曲集。ハーンのシェーンベルクヴァイオリン協奏曲。ボロディン四重奏団のショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲。このあたりが良い感じ。バロック音楽もタイトに響く低音のおかげで気持ち良いです。音色そのものが美しいわけではないのでヴァイオリンの独奏などは残念な感じですが小〜中規模オケで打楽器が活躍する曲には割と合うみたい。
 澤野弘之のBEST OF VOCAL WORKS[nZk]BEST OF SOUNDTRACK【emU】といったメリハリのあるアニメサントラは合う方。音場がしっかりしてて楽器の分離の良い録音と合う……のかな。
 ただ、まだ買ったばかりであるせいかハイハットを連打するようなところで音が繋がってしまって耳に刺さります。この粒の細かい音が連続するところでのイマイチな感じは椎名林檎のノイズ多用曲では聴いてるのが苦痛なレベルに。ボーカル曲の、日本製イヤホンやヘッドホンでよくいわれる「サ行のきつさ」もあってこれも同根であるように思います。気になったのはこのくらいで全体に優等生。ただし、用途はあくまでもポータブル向けで、騒音のある場所でも聞き取りやすい音であって、静かな場所で繊細な音を楽しむのには向かないと思います。

ノイズアイソレーションイヤーピース EP-EXN50M

 オプションのイヤーピースで良さげなのがあると知りました。SONY ノイズアイソレーションイヤーピースです。さっそく買ってきました。
 これは単純に遮音性を上げるアイテムみたいです。装着感がやや固くなるのでフィットサイズが標準のイヤーピースとはちょっと違うかも。私の場合は耳が痛くなったので元の標準イヤーピースに戻りました。遮音性も心持ち良くなる程度で効果は小さめです。むしろ装着状態の方が音に大きく影響するので、よりフィットする(かもしれない)ちょっと感触の違うイヤーピースと考えて試すのがおすすめ。過剰な期待をするようなものではないです。

ハイレゾ音源を聴いてみた

 MDR-EX750は「ハイレゾ対応」です。幸い、使用している机上のDACは96Khz/24bitまで対応していますし、音源もあります。

 DACの設定を96Khz/24bitモードにし『Hilary Hahn J.S.Bach Violin Concertos 88.2Khz/48bit』を再生してみました。これ、幸いにも?最初に買ったCD版(44.1Khz/16bit)とハイレゾ音源配信が始まったときに飛びついた88.2KHzの両者が揃っていて比較が可能です。さっそく聴き比べてみると……。

 わかんない。

 20Khz以上の音などふつうは聴こえないので当然といえば当然なのですが、音の定位や音場が違って聴こえるのではないかと期待したもののそういうこともないようです。1万円以下のポータブル用途の製品に期待しすぎてもいけないのかな。あるいは耳があまり良くないのかも。
 波形を編集ツールで比較してみると24bitのハイレゾ音源の方が音量の範囲が広く(弱奏パートと大音量パートの音量差が大きく)とても単純比較できなさそうです。またデジタル配信初期のものであったせいかデータ自体に微妙?と思える要素もあってこのデータでのCDフォーマットとの比較は避けた方が良さそう。残念。

ある程度使い込んでみた感想

 購入から一ヶ月ほどを経てそれなりに慣らしも進んできた頃合いかと思うので印象のまとめなど。

 ボーカル曲における「サ行のきつさ」は多少緩和されましたが解消にまではいたっていません。ハイハットを連打するようなところではやはり耳障りに感じられます。品質が安定していて使用開始直後からそれなりに性能を発揮できているということなのでしょう。それでも全体に音の固さがとれ、机上DACとiPod touchでの残響の柔らかさに差が出なくなってきたように思います。耳が慣れてきただけかもしれませんが。

 ボディはアルミらしいかっちりとした感触があって好感が持てます。塗装してあるので傍目にはプラと見分けがつかないのはちょっと悔しいかな。ケーブルは絡みにくくしなやかで非常に使いやすいです。ハイレゾ対応は音源側がまだ十全に生かしきっていないということもあるようですし、イヤホン本体にしてもポータブル用途でハイレゾというのはぴんと来ません。ティーンの繊細な耳であっても歴然とした違いを感じ取るのは困難だと思います。そもそも可聴範囲外の高音以前に、普通に聴き取れる音の範囲で「サ行の刺さり」「ハイハット連打が耳障り」といった些少ではある弱点はハイレゾ以前の問題に思います。たぶん高品位音源が活きてくるのはSHURE KSE1500 高遮音性コンデンサー型イヤホン KSE1500SYS-J-Pのようなハイエンド製品での話なのでしょう。お値段すごくてポータブル用と思うと手が出ませんが。

 苦手とするような曲ジャンルもなく、すっきりとした音で楽器それぞれの分離も良く立体感があり、うんと低い音もそれなりに再生してくれて、強めの低域はスピード感がありタイトで締まりある鳴り方でぼわぼわせずにボーカルや高音をマスクしてしまうようなこともないとても優等生的な音です。低音はタイトではありますがイヤホンらしいそれで、重くて量感のある鳴り方ではないので「これほんとに低音かなぁ?」と不満に思う人もいるかもしれません。プレーヤーとウェットティッシュを持って家電店で試してみるのがおすすめです。

 遮音性はほどほどで地下鉄や人声で満ちたファストフード店などではやや周囲の騒音が気になります。でも歩いているときの周囲の気配を断ってしまう程度には遮音性はあります。静かな図書館で音漏れを気にする必要もないはず。

 2017年6月に入ってコネクタピン近くで断線が起きかけていて、音が断続的におかしくなってしまいました。残念。


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アルドノア・ゼロ オリジナルサウンドトラック

アルドノア・ゼロ オリジナル・サウンドトラック
澤野弘之

 アニメのサントラの感想など。

 アルドノア・ゼロというTVアニメがあります。深夜帯放送のロボットものでなんでも吸収装甲、ロケットパンチ、ビームサーベルっぽいもの、宇宙戦艦といったベタな定番要素盛りだくさんで、シナリオは虚淵玄らしくしょっちゅう大きな転換を迎え、ダブル主人公の片方が受難担当であったりとエンタメに徹していて、キャラデザは志村貴子、OP主題歌はKalafinaと絶対にハズさないだろう布陣です。

 そのアルドノア・ゼロのオリジナルサウンドトラックを買ってみました。

 面白い……。

 一曲目のNo differencesはぱっと聴いた感じどうということのないボーカル曲の気がしたのですが、オケ風に多数のパートを駆使する二曲目以降を聴いて「なんかスゴイ」と思ってしまいました。iPodのおまけイヤホンや安ラジカセで聴くと音が団子になってフツーな感じなのですが、分離の良いそこそこの性能のヘッドホンで聴くと和声とオーケストレーションがぎょっとするくらいちゃんとしてる……。多様な音が使われているおもちゃ箱的な音楽なのに、音がにごったりぶつかったりしないですっきり入ってきます。低音のリズムもしっかり、弦やホルンのアコースティック楽器も気持ち良く。音色はロック的でありつつ現代クラシックの作曲技法が投入されていそうな骨格のしっかりした音楽でした。
 アニメに使われる音楽は映像のイメージを借りて楽しむという側面もまた魅力ですが、このアルバムの曲、特に器楽曲インストルメンタルやボーカルより器楽主役の曲はアニメのイメージを借りずに楽しめる力強さがある気がしました。

 Wikipediaを見たら『進撃の巨人』アニメの音楽も同じ作曲者とあり気になってきました。

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『SILFRA』HILARY HAHN & HAUSCHKA

SILFRA(輸入版)
HILARY HAHN & HAUSCHKA
Deutsche Grammophon
★★★★☆

 ヒラリー・ハーンの新譜です。今回はHAUSCHKAとの競演――だそうなのですか、HAUSCHKAって誰?状態でした。どうやらパフォーマンス寄りの表現者の模様。Youtubeで検索したところ、こんな動画がヒットしました。

 わは。面白い〜。
 CDだけ聴いてもこの面白さは伝わらない気がします。弦の上で飛び跳ねるタブレットケース。ピンポン玉。子どものおもちゃ箱のようなピアノの中。
 恐らくこのCDの録音においても上の動画のような光景が繰り広げられていたのでしょう。あるいはもしかしたらハーンのヴァイオリンでも同種の試みがなされているのかもしれません。そんな想像をしながら聴くと――ほら、このCDも「ちょっと変わった音のピアノ伴奏曲」だけではなくなった気がしませんか。
 目で見ても楽しい。

 ヴァイオリン奏者としては超正統派で音程とリズムの精確さが飛び抜けているちょっぴりお堅い印象のヒラリー・ハーンが、真剣に、でも気さくな楽しさを提供している録音ではないかと思います。
 楽器の音色を楽しむ、という点では確かにゲンオンかもしれませんが、聴きづらかったり眠くなるタイプの前衛ではないはず。

 HAUSCHKAのサイトに試聴コーナーもあるので、上の動画共々チェックしてみられてはいかがでしょう。

 私が購入したのは輸入版ですが国内盤『シルフラ』には日本版のみのボーナストラックも収録されているようです。

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AERIAL7 TANK 導入

 Jack Daniel's 缶ハイボールの景品としてやってきたAERIAL7 TANKの実使用レビューです。

 缶ハイボールを飲んで、抽選をして、当たってからAERIAL7 TANKについて調べてみたのですが、ストリートファッション向けのブランドから出ているDJ向けモデルということしかわかりませんでした。正直「DJ向け? ドンシャリで音も悪そう」という予想でした。

 が、送られてきたJack Daniel'sカラーのTANKは精悍でカッコイイ! 割と重くて大きめのヘッドホンなので外で使うようなものではないかなと思い、部屋で使ってみることに。

 実売価格は一万円弱。オーディオ趣味でない人には高級品の価格で、ヘッドホンマニアにとっては入門クラスの価格帯ではないかと思います。

ファーストインプレッション

 さて。
 実際に鳴らしてみると。

 ひっどい。

 いやいやいや。ここで投げ出してはいけません。今、愛用しているSTAX SR-001Mk2だって最初はひどい音でした。ヘッドホンではエージングというかバーンインというか、とにかく初期慣らしみたいな期間があるはず。機械的に作動するものは大かれ少なかれそんな慣らし期間が必要です。

 とりあえず、鳴らしはじめの印象では

  • 密閉型っぽい
  • 音漏れはする
  • 外の音もそこそこ入ってくる
  • 装着感は当たりは硬めだけどフワフワ・フカフカより清潔感あって好ましい
  • 耳の外周にタイト目に触れて耳朶の上に乗っかる
  • カッコイイ

 こんな程度。音質については

  • 解像感 …… 明らかに低い
  • 高音 …… 抜け悪め
  • 低音 …… 強めでベースギターのドリドリやバスドラの力強さがいい感じ
  • ボーカル …… 立体感があまりなく平たく聞こえる
  • クラシック …… 合わない
  • ジャズ …… 金管楽器は割といい
  • HR/HM …… ドリドリ・ダンダンという力強い音は楽しく鳴る
  • 映画 …… 合う! 音割ればかりの映画館よりずっとこっちのがいい

 クラシックを中心に聴いてきたので手元にあるロックやヒップホップの音源が少なくて心許ないのですが、歪みの大きなエフェクトをかけた電子楽器の音はクラシック向きの再生装置にはあまり向かなくて、でも、AERIAL7 TANKのようなヘッドホンで聴くとSTAXで聴くよりずっと楽しかったりすることに改めて気づきました。当初、あまり解像しないし音域は狭いしで「こんなの一万円近くで買っちゃったらがっかりするな」と思っていたのですが、HR/HM系を聴いてみて印象が変わりました。“いい音”じゃないけど“楽しい音”がします。ちょっと見直したかも。
 この系統の音なら音質そのものも良いSONY MDR-Z1000とかが欲しくなりそう。値段が違いすぎるかな。

Jack Daniel'sモデルに比較的近いのは右画像のAmazonリンク。真っ黒なこのモデルをベースに両耳のハウジングに金色の輪が入ってます。

音質

 2012年1月11日現在の音の印象を簡単に。
 毎晩、寝る前の一時間くらい、iPod touchに繋いで聴いていたのでそろそろ“慣らし”も終わったかなということでレビュー。

解像度 鳴らしはじめに比べるとずいぶん改善された。Audio Technicaの1万円前後のオープン型ヘッドホン(AD700)と比べても聴き劣りしないかも。
高音 うんと伸びるわけじゃないけれどまずまず。
低音 アタック感強めでドリドリした感じの音が楽しい。ライブ会場やクラブなんかのスピーカーの真ん前に行ったときの力強い感じが(雰囲気だけでも)出てる気がする。量感はあるけれど可聴域ぎりぎりのうんと低い音はあまり出ていないとも思う。
ボーカル 低音が強い割に埋もれない。特別に声がきれいに聴こえるわけじゃないけれどサ行がキツく聴こえたりもしないので価格帯的に優秀かも。
ロック HM/HRが楽しい。AKGやSTAXよりこっちのが断然楽しく聴ける。
クラシック ブラスバンド的な曲は楽しく聴けるけれど弦楽器やピアノ、オーケストラの音はイマイチ。
映画 ハリウッド的なズゴゴゴと低音の入れられている映画は文句なしに楽しい。

 全体的に印象が良くなりました。2000円くらいの密閉型ヘッドホンのようなチャチな音ではなく、音づくりのなされた音響製品の音がします。DJ向けを謳うカラーバリエーションが売りらしいモデルではありますが、電子楽器の曲によく合う楽しいヘッドホン。装着感も高級品という感じはないですが、しっかりしていて安っぽさはありません。
 クラシックやジャズにはぜんぜん合いませんが、映画、ロック、ポップスならば悪くないです。『魔法少女まどかマギカ』の「Magia」などは手持ちの再生機器の中ではこれが一番カッコ良く聞けました。低音大好きな人はよりズンズン・ドリドリ来るヘッドホンも他にあるので選択肢から外れるかな。デザイン重視でAERIAL7製品に惹かれて、でも音割れするようなヘッポコはイヤという層向けだと思いました。

 当選報告記事に写真もあります。

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HILARY HAHN HIGDON & TCHAIKOVSKY VIOLIN CONCERTOS

Higdon & Tchaikovsky Violin Concertos (輸入版)
Hilary Hahn
Deutsche Grammophon

★★★★☆

 国内盤が先行で2010.5.26に登場し、9月になってようやく海外盤が出たヒラリー・ハーンの新譜です。

 ヒグドン・ヴァイオリン協奏曲。ヒグドンって聞き慣れない作曲家ですが現代の人だそうです。ハーンが学んだカーティス音楽院の先生だとか。聴いてみると確かに現代的ではあるのですが、同時に古典的な印象でした。細かな音の並びは“現音”っぽいのに、メロディもよく聴くと“現音”っぽく捉えづらいヘンテコなのに、通俗的というか耳に馴染みやすいというか。曲の進行とともにイメージがいつの間にかまったく変わっていたりするあたりはやっぱり現音っぽいのかも。

 カップリング曲のチャイコフスキーは異色演奏。メロディアスで華やかでくねくねで煌やかに演奏されることの多いこの曲が、歯車のようにカチコチ駆動されています。音がつながるよう強弱・強弱と色彩をつけていくのがこの曲のスタンダードな演奏の気がするのですがそういった脚色が排されてみるとアララ? 実はチャイコンってすごく変な曲なのでは、と思えてきました。シベリウスのVn協と並んでハーンの有名曲風変わり録音になってる気がします。これはチャイコンの再発見っぽいアプローチかも。初演を依頼されたアウアーが「演奏不能」と拒否したのはこんな感じの素のチャイコンを頭の中で鳴らして気に入らなかったのかもしれません。スコアはアウアー版ではなくチャイコフスキー・オリジナル版に従っているとライナーノーツにありました。このオリジナル譜の選択もハーンらしい。おー。そういえばチャイコンの初演を行ったアドルフ・ブロツキー、ハーンの師匠であるヤッシャ・ブロツキーと関係あるのかな?
 一楽章はややゆっくりめに聴こえる寂しげな音。盛り上がりを避けている感じ。でも演奏時間を見てみるとオリジナル版の演奏時間としては特に長くない。リズムを揺らさないことで淡々と聞こえたということでしょうか。三楽章もあまり盛り上がらずにハーンの頑固職人めいた面が強調された気がします。イギリスに征服されたロシア@アルコール抜き、みたいな。

 チャイコンはやっぱりお風呂の鼻歌みたいなのがいいな、なんてちらりと思ってしまった一枚でした。

 ハーンが「カルメン」を弾いてもやっぱり既存のイメージから離れた演奏になるんだろうな。ハチャトリアンVn協もオイストラフの録音とはかけ離れたイメージのものになりそう。
 じゃあ、バルトークは?
 聴いてみたいです。すごく。

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『パガニーニ24のカプリース』神尾真由子

パガニーニ:24のカプリース(DVD付初回生産限定盤)
神尾真由子
BMG Japan

★★★★☆

 第13回チャイコフスキー国際コンクールのヴァイオリン部門で優勝した神尾真由子の2ndアルバム。コンクールの様子はテレビでも特集番組が組まれ、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を弾く姿は印象に残ったのではないでしょうか。1stアルバムの『PRIMO』はあまり印象がなかったのですが、こちらのパガニーニはぴりっとして好印象でした。

 とはいえパガニーニのカプリース。この曲はみとりの録音で刷り込まれているものでどうしてもそちらとの比較になってしまいますし、技術と個性が同居するマイケル・レビンの名盤もあります。
 みどり贔屓の私はやっぱりみどりの録音の方が好き。

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EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX

EGO-WRAPPIN’AND THE GOSSIP OF JAXX
2009.2.18
3000円

★★★☆☆

 二月に発売されたタイトルで今更の感想ですが。
 アルバムタイトル通り“GOSSIP OF JAXX”バンドの演奏に焦点の当たっている印象です。でもちょっと音が多くて雑然とした感じ。演奏技術が抜群のバンドなのでもうちょっとそれぞれの楽器の音色自体をシンプルに聞かせて欲しかった気もします。というのはオーケストラよりも器楽独奏曲が好きな私の我が儘か。
 『merry merry』『ON THE ROCKS!』でも買ってきてしばらくは「新しい方向性はいいけど耳に馴染まないなー」と思いつつも再生頻度は高くていつの間にか定番再生ディスクとなっていました。今回の『EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX』は……一聴してやはり「う、合わない」という曲もあったのですが、半年後には再生トップ10に含まれてたりして。
 そして予想通りEGO-WRAPPIN'でBEST WRAPPIN'と並んで再生頻度の高い曲になってます。(2009.11.28)

 今回収録の「GO ACTION!」は新録音。
 「だるい」は聴いているとアンニュイというか「だーるーいー」気分に。
 「雨のdubism」はなんだか昔懐かしい雰囲気の音。これは好き。
 「下弦の月」も好きな感じの曲。バンドネオン大好き。ぽわわんとした金管の低音はユーフォニアムというのか。

 愛用のSTAX SR-001MK2Amazonとは少し相性が悪いようで残念。これまでのアルバムやベスト盤に比べるとものすごくクリアな音作りの録音ですが、それでも楽器の音が重なる部分がおだんごっぽく聞こえる部分があったり。う~ん。STAXの上級機欲しいなぁ。

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『EGO-WRAPPIN’AND THE GOSSIP OF JAXX』

 二月にはEGO-WRAPPIN'の新アルバムが出るらしいので今回は出遅れないぞ、と。

EGO-WRAPPIN’AND THE GOSSIP OF JAXX
3000円
発売日:2009/2/18

 公式サイトの告知ページではすでに何曲か試聴できるようになっていました。
 好きな感じド真ん中。期待大。

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